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研究紹介1: CVD法による単層カーボンナノチューブの結晶成長

単層カーボンナノチューブの低圧力・低温成長

層数が1層であるカーボンナノチューブは、本学の飯島終身教授が発見された材料です。直径がわずか1 nm(ナノメートル)程度の非常に微細な物質ですが、電気伝導特性など様々な優れた特性をもっており、Si LSIに代わる次世代エレクトロニクス材料として注目されています。丸山研究室では、高真空ガスソース法というユニークな手法を用いて、低圧力下や低成長温度での単層カーボンナノチューブの成長を実現しています。これまでRh触媒を用いて成長温度300℃以下での単層カーボンナノチューブ成長を達成してきました。これは,報告されている中では最も低い作製温度です。現在は,主に白金族元素を触媒に用いて,カーボンナノチューブの直径やカイラリティ制御を目指しています。

 

【左図】Pt触媒から成長した直径数nmのカーボンナノチューブ [Carbon 96(2016)6に掲載]
【右図】Rh触媒を用いて300℃以下で作製した単層カーボンナノチューブのラマンスペクトル[Carbon 116(2017)128に掲載]

研究紹介2: 放射光を用いたカーボンナノチューブ成長メカニズムの解明

SiC表面分解法によるカーボンナノチューブ成長メカニズムの解明

SiC単結晶を真空中で高温(1300℃以上)に加熱すると、ジグザグタイプのカーボンナノチューブが触媒無しに成長することが知られています。このユニークなナノチューブ成長に対し、走査トンネル顕微鏡観察やX線吸収微細構造測定など様々な手法を用いて、SiCの表面分解に伴うC-C結合方向の変化や結晶化の過程を明らかにし,成長メカニズムの解明を行いました。



【左図】カーボンナノキャップ先端の走査トンネル顕微鏡像[Jpn. J. Appl. Phys. 45 (2006) 372に掲載]
【右図】SiC結晶表面から生成するカーボンナノチューブの模式図とX線吸収スペクトル(高エネルギー加速器研究機構にて測定)[J. Phys. Chem. C119(2015)26698に掲載]



触媒金属粒子からのによるカーボンナノチューブ成長メカニズムの解明

一般に,単層カーボンナノチューブの作製には化学気相成長(CVD)法が用いられます。その際,触媒金属粒子と炭素源ガスとの反応が生じますが,その過程についてはまだ明らかにされていないことが多くあります。丸山研では,放射光を用いた微細構造分析により,その生成過程の解明を行っています。




カーボンナノチューブ作製用のPt触媒粒子の加熱によるXAFSスペクトルの変化(あいちSRにて測定)
[J. Crystal Growthに掲載]

研究紹介3: 単層カーボンナノチューブとグラフェンのハイブリッド構造の作製


単層カーボンナノチューブとグラフェンのハイブリッド構造体は,導電性をもち,化学的に安定である上,高い比表面積をもつことから,触媒粒子の担持材やLiイオン電池や燃料電池などの電極への応用が期待されています。丸山研究室では,グラフェン上に単層カーボンナノチューブを直接生成させることでハイブリッド構造体の作製を目指しています。



【左図】グラフェン上に単層カーボンナノチューブを直接成長させることにより,ハイブリッド構造を作製
【中図】生成した単層カーボンナノチューブのTEM像
【右図】グラフェンのTEM像
[Chem. Commun. 51 (2015) 8974に掲載]